記憶を記録に

当たり前のことを、あーだこーだと理由を付けて大事だなあと納得するのが好きな人のブログです。

どうして漫画は面白いのか。浦沢直樹の漫勉を見て思うこと

就職活動をしていると、とにかく、「それなんで?」「どうしてそうおもうの?」とやたらめったらクリティカルに質問を浴びせられます。好きな物は好きなんだっていうのが紛れもない真実だとしても、今後何十年とつれそう社員なんだから愛を言葉で説明してくれないと信用できないっ!ってことらしいです。めんどくさい彼女かよ〜とか思いながら、やっぱり漫画が好きなので説明できるようになりたいなと思う今日この頃です。

そんな折に出会ったのが、浦沢直樹の漫勉。

20世紀少年、MONSTER、などが代表作の浦沢直樹先生が、毎回、大物漫画先生と対談し、創作の秘密を探るNHKの番組です。定点カメラで捉えられた先生方の執筆姿や本物の仕事場、漫画が生まれる瞬間を見れる、漫画ファンにはたまらない番組!!!

www.nhk.or.jp

今回のお相手は、萩尾望都先生。 ポーの一族などが代表作の、少女漫画界を牽引する大物作家さんです。繊細な画面と文学的な香りのするストーリーが魅力。私は、先生の集計恐怖症と親子の確執を描いたイグアナの娘という漫画が大好きです。

萩尾先生の仕事風景が番組中で取り上げられます。仕事場に設置された定点カメラで、萩尾先生の手元を撮影するのですが、先生は彫刻刀で彫るように漫画を描きます。魂をのせるという表現がしっくりくるほど、いっぽんいっぽん繊細な線を引いていきます。漫画が、こんなに時間のかかる作業だと思っていませんでした。

 

漫画にしかできないことってなんだろう?

表現には様々な形があります。音楽、映像、映像だけでもドラマ、映画、ドキュメンタリーなど様々な形式があります。どうして漫画なんでしょうか。

その答えのヒントは、番組中で語っておられた萩尾先生の想像力をフル活用した読書体験にある気がします。萩尾先生は、漫画の1コマの一つのセリフを見て、その背景や主人公の思いに思いを馳せます。想像の世界からふと画面に目を落とすと、台詞が一つしか書かれていなくてびっくしたことがあるそう。

漫画は、制限のある表現です。ドキュメンタリーのように現実を切り取った映像で届ける事は出来ませんし、映画のように目や耳に一度に訴える演出は出来ません。しかし、その制限こそが読者の想像力をかき立て、物語に深みを与えるのではないかなと思います。自分が想像力を巡らせた物語や、共感したキャラクターには愛着が沸くもの。漫画が多くの人を虜にする一因は、表現の制限と想像力があると思います。

漫画は様式美なのではないか?

漫画は、表現形式の一つ。「●●を表現したいなら、別の方法が最適なのでは?」という議論は甚だナンセンスです。漫画は、ペンと紙という限られたなかで、どう表現するか、の世界です。その議論はベクトルが違います。

萩尾先生は、どうしてこんな繊細な作業をし続けてきたのか。好きだからでしょう。絵を描くことが、好きで、得意だったからでしょう。だけどそれだけでは、ここまで続けられなかったのではないでしょうか。その答えは、伝えたいものがあるからに他ならないと思います。萩尾先生は伝えたいことがあるから、それを表現するために、キャラクターの繊細な目の光や手の角度、眉毛のいっぽんいっぽんにいたるまで描くのです。

漫画の始まりと言われる落書き鳥獣戯画の頃から、いつしか漫画は伝えたいことがあるから、描かれるものになったのではないでしょうか。漫画は面白ければいいものだ、というのは紛れもない正論です。だけどその背後には、作者の読者に笑ってもらいたいという思いがあるのではないでしょうか。伝えたいことがあるならば、限られた制約の中で最高の表現を見つけ出し、読者に面白いと思ってもらわないと、そもそも読まれないのです。

私が漫画が好きな理由。

面白いから、楽しいから、好きだから。これは大前提です。その上で、理由を尋ねられるとしたら。それはきっと、共感を伴う読書体験により、キャラクターに愛着を持っているから。そして、漫画という制限された形式の中で、何かを表現しようともがく先生たちの姿、そこから生み出された画面に感動するからだと思います。それに、なにより、多くの漫画から、人生を強く生きる沢山のメッセージをもらってきました。だから私は漫画が大好きです。

 

以上です。もっと漫画、読みたいなあ。